超環境型オフィスの輻射空調システムでグルンドフォスのTPEが活躍

Overview_TEXT

要旨

2012年5月、東京・京橋に清水建設株式会社の新本社ビルが竣工しました。
高い省エネ性能と快適性を実現し、次世代オフィスビルのスタンダードになる可能性を秘めた 同ビルの輻射空調システムで、グルンドフォスのTPEが活躍しています。

江戸時代、今に続く歴史の幕を開けた京橋。地名の由来となった橋は江戸開府の頃に創架され、日本橋から東海道を経て京へ向かう最初の橋として、物資や人が集う重要な意味を持っていました。現在川は埋め立てられ、橋は道路に残された親柱にその名残をとどめるだけですが、歴史を語る街並は今に引き継がれています。
京橋は、清水建設にとってゆかりの深い土地です。創業100年目にあたる1903年、清水建設は日本橋本石町から京橋に本店を移転。以来、この地を基盤に日本有数の大手ゼネコンとして歴史を紡いできました。

「新本社ビルプロジェクトが始まったのは、2005年のことです。都市再生特別地区の認定を受け、自社の発展のみならず地域全体の発展にも寄与することを基本構想として、スタートしました」そう話すのは、設備設計部2部の部長・荒井義人さんです。全社あげてのトップランナープロジェクトに掲げられ、社内には「200年の歴史が培った技を集結し、未来の飛躍につなげよう」という気概が満ちていたと言います。

都市再生特別地区では、事業者が提案する都市再生への貢献内容に応じて、容積率などの規制が緩和されます。清水建設が計画に盛り込んだ高度な環境性能や、地下鉄や駐車場など周辺整備への公共貢献は高く評価され、延床面積5万㎡超の大型開発が実現しました。 
 

卓越した環境性能を実現    

新本社ビルのベースとなったコンセプトは3つありました。1つ目は、オフィスビルとして前例のない環境性能を実現すること。2つ目は、素材の選定や加工などを含め、建築工程そのものにモノづくりへの技術や哲学を表現すること。3つ目が、働きやすく、コミュニケーションを促進する先進的なワークプレイスをつくることです。
中でも最重要項目に据えたのが、環境性能でした。

「ビル建設において、環境への配慮はすべての基本となる大命題です」と荒井さんは言います。「省エネや再生可能エネルギーを利用して、運用エネルギーをゼロに近づける“ZEB”(ゼブ:ゼロ・エネルギー・ビル)という概念も、広く浸透してきました。新本社では、運用開始後の2015年にカーボン・ゼロを達成することを視野に入れ、設計段階の目標としてカーボン・ハーフを掲げました」

基準としたのは、2005年における東京都内事務所ビルのCO2排出量平均値です。厳しい省エネ規制都市である東京では、この時点で多くのビルがエネルギーの効率化を進めており、半減は容易ではありません。オフィスビルの電力消費の割合は、5割が空調、2割が照明、残りがオフィス機器などのコンセントによる消費に分けられます。カーボン・ハーフの鍵を握るのは、空調と照明の消費量の削減率。設備設計チームに課せられた責任は重大でした。

「実現のために、意匠、構造、設備など各チームができることを考え、技術開発に臨みました。断熱材の強化、フレームに太陽光発電パネルを組み込んだハイブリッド外装システム、日射を効率的に遮るファサード、LED照明の活用など、全方位的に環境性能を高めていく中、私たち設備設計部門が着目したのが全く新しい空調システムの導入でした」(荒井さん)

現在、日本の多くのビルで使われている空調システムは、室内の空気を循環させて温度を調整するエアコン方式です。しかしこの方式では、カーボン・ハーフに必要とされる大幅な省エネには限界がありました。そこで目を向けたのが、輻射空調システムです。
「輻射空調は、熱は高いところから低いところへ移動するという性質を利用した技術です」そう説明するのは、空調・衛生設備の設計責任者として実質的に設計を手がけた髙橋満博さんです。「例えば冷房の場合、輻射天井パネルに冷水を流すことで室内の熱が天井に向かい、室内温度が調整されます。エアコンのように風を体にあてて強制的に熱を奪うのではなく、体が発する熱が物理現象として移動していく。そのため室内の温度分布に偏りがなく、快適性が高いのが特長です」

従来の空調と比較すると、冷房時はより高い温度設定で、暖房時は低い温度設定で快適さを感じることができます。何よりも、空気に比べて格段に熱搬送効率が高い水を媒体とするため、省エネ率が大きく向上するのです。
ただ、課題となったのが結露の発生でした。輻射空調システムは、元々低温低湿の欧米で発達した技術。高温多湿の日本で冷房として機能させると、どうしても結露が発生してしまうのです。

解決のために考案したのが、湿度調整システムでした。換気のために取り込んだ外気をデシカント(除湿剤)の付いた空調機で湿度を下げ、床吹出しで室内に供給します。またオフィスで机を並べる各自の足元にはパーソナル床吹出口を設け、それぞれが自由に開閉できるようにしました。体調によって自分で風量を調節でき、より一層快適性がアップする仕組みです。
 

TPEユニットを各階に設置

冷温水を搬送するために採用されたのは、グルンドフォスのインバータ一体型モータ搭載インライン立形単段ポンプTPEです。
「各階に置くことを考えると、パイプスペースをできる限り最小限に抑える必要があります。検討を進める中で候補に挙がったのが、立形で場所をとらないグルンドフォスのTPEでした」(髙橋さん)

これまでにも数多くのプロジェクトでグルンドフォスの製品を採用してきた清水建設。その実績から、性能やアフターフォローには盤石の信頼を置いていたと言います。立形という形態に加え、モータとインバータが一体型だということもTPEの採用を後押しした理由でした。「せっかくポンプをコンパクトに納めても、インバータ盤で場所をとってしまっては意味がありません。インバータが内蔵されているTPEなら、システマチックで占有スペースが少ない。流量も充分で、今回の用途に非常にマッチングしています」

省スペースの鍵を握る配管設計には、高砂熱学工業株式会社とのチームワークで臨みました。同社の作業所長を務める古川潤さんは、いくつかのプロジェクトで荒井さん、髙橋さんとチームを組んだ経験の持ち主。互いに信頼し合うパートナーだと言います。

「空調機器に比べるとポンプは格段にコンパクト。そこにも輻射空調のメリットがあります。かつ一体型構造で立形のTPEを使うことで、驚くほどスペースを省略できました。将来的な更新を考慮に入れ、空間を効率的に使用した配管設計に取り組み、ユニット化をすべて済ませた上で納入しました。設計、施工、そして運用までの流れが非常に効率的で、イニシャルコストも抑えることができました」そう話す古川さんは、機能性に加えて「美しさも重視した」と笑顔を見せます。「日本で最新鋭のオフィスビルの名に恥じないよう、すべてブラックで統一して、スタイリッシュに仕上げました」美しさを追求するための試行錯誤は、ムダのない効率的な配管にもつながっています。荒井さんも「機械室に入れておくのがもったいないくらいかっこいい」と笑います。

実際に稼働を始めてからのエネルギー効率も、非常に高い数値が出ています。約1600m2のフロアにおいて、空調機器なら20 kWhほどの電力が必要とされるところ、ポンプが消費しているのは1~2 kWh程度です。


輻射空調と スプリンクラーシステムを兼用

輻射空調システムを採用するという大きなチャレンジに加え、清水建設が臨んだ更なる挑戦がありました。それが、空調用冷温水管とスプリンクラー配管の兼用です。「スプリンクラーの水を建物内の各所に供給するために膨大な配管を必要とします。建設時の環境負荷は大きく、空調用の配管とスプリンクラー用の配管を二重に置くのは設備としてもムダが多い。その解決策を考えていた時に得た着想でした」と荒井さん。兼用すれば、1フロア当たりの使用配管重量を半減でき、建設時のCO2排出量も削減できます。

世界でも例のないシステムだったため、あらゆるケースを想定しながら試行錯誤を続け、実験を繰り返します。配管のモデルに実際に火をつけ、スプリンクラーがきちんと作動するかどうか。配管の圧力低下を感知することで漏水をキャッチできるかどうか――検証と実験の繰り返しを経てシステムが形になってくると、次に待っていたのは行政の許認可の取得です。2004年に消防法が性能規定化され、従来の法規制に捉われない新技術の実用化が期待されていたとは言え、前例がないため行政側にとっても判断は容易ではありません。そこで、まずは研究会を開くことからスタートします。

「一つひとつ安全性を確認し、理解していただくために、実験や研究会を重ねました。許可が下りたのは、最初の研究会を開始してから2年ほど経ってからのことです」(髙橋さん)

配管の兼用は、スプリンクラーの信頼性向上にもつながっています。輻射空調が順調に動いていることは、スプリンクラーの配管内を問題なく冷温水が循環している証明になり、同時に輻射空調の効きが悪くなることは、冷温水の循環に何らかの問題が発生していることを示します。日常的に不具合を感知できることで、スプリンクラーのきめ細かなメンテナンスにつながるのです。


次世代への布石に

2012年5月15日、新本社が竣工しました。この時点で見込まれた運用初年度のCO2排出量の削減率は、年間で62%。環境や景観への配慮や室内の快適性など、建物の品質を総合的に評価するCASBEE(建築環境総合性能評価システム)では、過去最高得点となるSランクのBEE値9.7を取得しました(2012年2月時点)。超環境型オフィスという名にふさわしい先進技術の数々は評判を呼び、これまで1万人以上の人々が見学に訪れました。実際にオフィスで仕事をするスタッフからの評価も上々です。

「設備の省エネ率は、運用の仕方によっても変わってきます。季節や天候に応じた省エネ運転やブラインドコントロール、空調・照明の運転制御など、今後も工夫を重ね、さらなる省エネを進める予定です。ゼロ・カーボンは、すでに射程距離に入っています」と荒井さんは意欲を見せます。

プロジェクトを振り返る中、3人の口からは、苦労話よりも「楽しかった」という言葉がよく飛び出しました。「設備設計のチーム内だけでなく、全社横断的に連携して知恵と技術を結集したことが、成功のなによりの要因です。これまで誰も取り組んだことのないことに挑戦している、世界一のものをつくるぞという思いが、全員を結びつける絆とモチベーションになりました」と荒井さん。環境技術の粋が結集した新本社ビルは、エネルギーを自活する未来都市「グリーン・フロート」構想を掲げる清水建設の、新たなスタート地点。未来へのビジョンは、ここから広がり続けています。

「省エネ率やライフサイクルコストの削減、快適性など、数多くの利点を持つ輻射空調システムは、今後大型建築物のスタンダードになっていくと思います。現在、運用しながら実績データをとる中で、改善点も見えてきています。その一つひとつを検証し、チューニングを進め、さらなる技術の発展につなげていきたい」(髙橋さん)

「建築における環境負荷の低減は、世界のどの国でも求められる第一要件。施工会社である我々にできることは何か――新本社ビルは、その問いへの現段階での答えです。この技術や理念を、日本はもとより世界中に広めていきたい」(荒井さん)

「お客様のイメージを具現化し、ものづくりとして落とし込んでいくことが私たちの仕事です。よりコンパクトで、よりエネルギー負荷を抑えた設計……省エネ性の追求に終わりはありません。技術力を以て、お客様のリクエストに的確に応え続けていきたいと思っています」(古川さん)

ゼロ・カーボンの鍵を握る輻射空調システム。その心臓部に採用されたグルンドフォスのポンプも、先進テクノロジーの普及とともに活躍の場が増えていきそうです。
 





    Facebook Twitter LinkedIn Technorati

主題:

超環境型オフィスの輻射空調システムでグルンドフォスのTPEが活躍

場所:

日本

会社名:

清水建設株式会社 新本社ビル

TPE

ユニット内のTPE

PROJECT
納 入 先  :清水建設株式会社
                新本社ビル
設置場所 :2~21階(4階を除く)
導入製品 :インバータ一体型モータ搭載
                インライン立形単段ポンプ
                TPE 38台
用      途 :輻射空調とスプリンクラー兼
               用システムへの冷温水搬送

荒井義人さん

清水建設株式会社
設計本部 設備設計部2部
部長 荒井 義人さん

髙橋満博さん

清水建設株式会社
設計本部 設備設計部2部
設計長 髙橋 満博さん

古川潤さん

高砂熱学工業株式会社
東京本店 技術2部技術1課
作業所長 古川 潤さん

天井

会議室内の天井。窓際には傾斜のついたフィン型のハイブリット型輻射パネルが貼られ、熱負荷を軽減する仕組みになっている(向かって右側が窓際)。

Contacts_TEXT

お問い合わせ

問い合わせがございましたら、下記フォーマットに内容をご入力の上、送信ボタンをクリックしてください。

電話番号

中部:053-428-4760

FAX

中部:053-428-5005

ウェブサイト

http://www.grundfos.jp

お問い合わせ

問い合わせがございましたら、下記フォーマットに内容をご入力の上、送信ボタンをクリックしてください。

電話番号

中部:053-428-4760

FAX

中部:053-428-5005

ウェブサイト

http://www.grundfos.jp